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「食べて 走って 勝って ~レースに勝つための食事~」の紹介を兼ねた感想記事。

エピソード4「戦いが終わるまで安息はない」


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アスリートのバッテリー
 フランスのエイメ。フランス語でマッサージ師を意味するソワニョールのサンドラにマッサージを受ける選手。疲労の早期回復に、レースのことを一時忘れられるとあって、楽しみの一つだろう。
 サンドラはレースに必要な補給食の準備も担当。疲労度によって45~60分のマッサージとあって、選手には欠かせない。

第11ステージ
 レースは第11ステージ開始2時間前。監督のホワイトはチームをサイモンのフォローに回す。
 スタッフの一人ジュリアンは車でレースの15~30分先のコースを走り、コースの重要なポイントの視察に当たる。補給地点を過ぎると道幅が狭くなるので、危険も大きくなる。この情報を監督に伝え、監督から選手に伝わる。

 サンドラは補給食を受け取るためハンナを訪ねる。ハンナはすでに用意しておいた補給食をサンドラに説明。一口大の小麦のバー(チョコバーやエナジーバー)といった感じだが、ちょっとパサつきそうな気もする。
 選手に渡す袋にはその補給食に糖分入りドリンクと水、ライスケーキとサンドイッチ、バナナ。見た目が非常に可愛らしい。カロリー控えめ。
 スタート時はジャムを塗ったパン、食べやすく消化が早い。クロスタータというイタリアの焼き菓子も。これが非常に美味しそう。サンドイッチにはハムとチーズ。すべて漕ぎながらの食事になるため一口大、走行中の燃料補給がやりやすい。

 選手が補給を怠り疲労を感じると、リカバリーが難しくなる。若い選手だと20キロを越えた辺りでバテ始める(20キロという数字だけでも驚異的!)。そのために液状のシロップがすぐエネルギーに変わるため効果的だが、血糖値が急上昇するので、疲労も一気に来やすい。摂取するタイミングが早すぎると、そのまま燃え尽きてしまう。胃がどれだけ受け付けるかも注意点。まずいカクテルみたいな味だとか。


道を知る
 第11ステージは203.5キロ。フランスのエイメを発ち、ピレネー山脈の玄関口であるポーがゴール。
 ホワイトは先ほど受け取った情報をもとに選手にアドバイス。レースに最適な道が無く、常に2車線が続く。
 補給係を請け負うダミアンはツール・ド・フランス初出場ながら、山岳コースで期待がかかる選手。

 先を行く偵察のジュリアンは車を降り、道端の乾いた草を使って風向きをチェック。コースに対し横向きの強い風があることを警告。風は落車を引き起こす可能性があるため注意が必要。
 補給地点には200名弱の選手が殺到。マラソンなんかでも給水に失敗するケースが多々あるが、よりスピードのある自転車ならなおさら危険。しかも道幅は4メートル。転倒する選手も出始める。

 ダミアンも自転車の後輪を故障、すぐにメカニックがタイヤ交換に。監督の乗る車に乗っているというのも初めて知った。自転車の交換は痛いロスで、先頭から遅れるほど脱落しやすくなる。ダミアンは結局追い付けず、サイモンを助けられなかったが、25歳以下で総合10位以内のホワイトジャージはキープ。


スタッフもご馳走を
 各ステージの幕開けにはパレードが開催される。いかにもなセンスのパレード車がぞくぞく。歌ったり踊ったりお菓子も観客に投げ入れる。1400万個ものお土産が配り、会場を盛り上げる。

 第12ステージは214.5キロ、ピレネー山脈を走る。
 ハンナたちはデュ・プランティエの養鶏場を訪ねる。オーブンで焼くチキンローストのためだ。放し飼いをしている養鶏場で、エサも自作、雑穀とグルテン、骨を丈夫にするリンとカルシウム、肉を軟らかくするミルクパウダーを混ぜ合わせている。成長に合わせゆっくり育てることで、肉のうまみや風味が増す。
 その養鶏場で育てているのか、あり合わせの洋ナシも確保。

 レースは残り156キロ。監督はスタート時点では補給食を固形のものに指定。後半になると胃が受け付けなくなる。固形物は腹持ちがいいため前半に入れておく。だが糖質の摂取が少ないと、胃の不調につながることがある。ジェルや甘味の補給は最後にまわしがちになるためだ。冒頭のハンナの説明と一致。

 選手からサイモンとチャベスに水を要求。車からすぐに手渡すことができた。選手はユニフォームの隙間などに10本ものボトルをねじ込むことができる。手渡し方は選手にボトルを握らせ、減速を防ぐ。ちょっと車の力を借りているような気もするが、レース上はセーフなのだろう。不正にならないようにチェックはされているとのこと。

 第12ステージ、サイモンは9位でゴール、ホワイトジャージをキープ。
 レース後、監督たちはつまみのチーズとお酒を飲みながら作戦会議。選手にはラム肉を振る舞う。付け合わせはピラフ、カリフラワー、サラダ。選手各々が自分で取るバイキングスタイル。
 シェフを含めたスタッフたちのご飯は調達したチキンにワイン。半分を終え、折り返しと言うことでシェフもごちそうを。脂肪分たっぷりなので、選手には適さないメニュー。

 キッチンには水蒸気があるため、チキンの皮をぱりっと焼くのは難しい。塩をまぶし、冷蔵庫にいれて水気を抜くとうまく仕上がる。付け合わせの洋ナシもチキンと一緒にロースト。先に焼いたタマネギは飴色で美味しそう。


牛肉の効果
 第13ステージはフランス、サン・ジロンからピレネー山脈を抜けフォアがゴール。パリ祭りに当たるということで人出も相当。革命記念日らしい。

 レース開始2時間前、今度は下り坂。今日の目標はサイモンを守り抜くこと。エステバンとダミアン、ロマンがサイモンにつき、チームで挑む。

 ハンナたちはラゥスの畜産農場へ。山の中にある自然豊かな場所。お目当ては牛肉。鉄とビタミンB12が豊富で、酸素を体内に巡らせる赤血球を補う。酸素は炭水化物を分解し、エネルギーを作り出す。ここでも自然そのままの素材を追求。さらにアスパラガスや数種類のハーブも調達。
 牛肉と豚の腸を皮に使ったソーセージ作りも見学。加えるのは塩とコショウだけ、添加物はなし。豚の脂身を巻いて保護された牛肉の肩の部分がバスクカット。ランプ肉(胃)の塊も。

 第13ステージは101キロ、3つの峠が存在するアップダウンの激しいコース。
 そんな折、監督になんとヒュー・ジャックマンから写真が届く。ウルヴァリンを演じた俳優と言えばわかるだろう。映画に詳しくないスタッフはピンと来てない。

 ゴールまで43キロ。ジュリアンから道の状態はいいこと、森に入ると数百メートルの間路面が濡れていること、その後道が細くなり、曲がりくねっていくことが伝えられる。その情報の甲斐あってか、サイモンは総合5位まで順位を上げた。

 夕食の時間、ハンナは牛肉をカットしてハーブに漬け込む。コショウ、ローリエ、ニンニク、セージに、タイムやローズマリー。この肉を串刺しにし、バーベキューでいただく。串はローリエの枝を削って串にしたもの。まるで石器時代。

 レースも折り返し、選手たちにも疲労の色が見えるが、これからの戦いにチームは決意を新たにしていくというところで〆。


補給食の順番
 補給食はレースの序盤で固形物を食べ腹持ちを良くし、疲労の溜まる終盤は受け付けないので流体を、というのは理に適っている。補給物資の受け渡しもすべてペダルを漕ぎながら行うので、実に過酷。
 レースの先を行く偵察係がいるのも驚き。適切な情報が伝えられれば、レースを優位に運べる。

 いよいよレースも折り返し。間近の観戦者として、今後の行く末が気になるところ。