わたモテ17巻
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! の感想をしたためていきます。

誰のために願うのか


あらすじ
 七夕イベントで盛況な原幕高校。数多の願いが吊るされた短冊を見つめる智子は……。


第2回七夕祭り
 扉絵。七夕イベントと一目でわかる巨大な笹に、色とりどりの短冊が吊るされています。周囲にはもこっち達と、まこっちの手を引くキバ子(美少女)、画面奥にはこみさんと伊藤さん、朱里とさやかの後輩組の姿も。それぞれが七夕のイベントを楽しんでいるようです。

 2年の同イベント時には友達がおらず、挙句の果てに萩野先生に押し切られ、ひどい内容の短冊を吊るさせられる羽目になり散々だったもこっちには苦い思い出であることは間違いなし。さて、友達もできた3年の七夕はいかに。

 第2回七夕祭りが開催中の校内。生徒が七夕の笹に思い思いの願い事を記した短冊を吊るすさまを、校舎から見つめるもこっちとゆりちゃん。謹慎を終え、目のクマもちょっと戻ってきたか。

 もこっちは、昨年の同祭りで短冊を吊るしたことを告白。意外そうなゆりちゃんに、ウケようと思ったと正直に打ち明けるもこっち。そんな彼女に、ゆりちゃんは「ウケてくれる友達いたの?」「誰にウケようと思ってたの?」と内角をエグる危険球を連投。この気安いやり取り、嬉しい感じ。

 もこっちはゆりちゃんの願いを尋ねます。ゆりちゃん、昨年の七夕祭りでは願い事があったものの、まこっちやキバ子、サチ達が吊るすのを遠巻きに眺めているだけでした。ゆりちゃんの過去にまこっちとキバ子あり、というのはやはり明らか。伏線が積みあがっていますが、本編中でどう料理してくれるんでしょうか。

 もこっち、ゆりちゃんに願い事自体があったことに言及。金か? エロいのか? 誰かに暴力か? など俗な予想をぶつけますが、ゆりちゃんは黙秘権を行使。


恐怖の後輩・雫
 もこっちは一人、笹のそばに近寄って願いの書かれた短冊を見つめます。昨年の七夕祭りの記憶を思い返す彼女を呼ぶ、「せんぱぁーい」という甘ったるく媚びた声。そう、ゲス乙女こと雫の登場です。彼女のやってきた方向には、相も変わらず男子の取り巻きが。増える男子。

 クラスの女子がみんなで書いていたという雫。ここで見える短冊の文面が何とも不穏……これが雫のクラスの女子たちが吊るしたもので、雫の知らないところでやっていたのだとしたら、彼女の苦しい立場が分かろうというもの。雫を慮ってか、もこっち、共に書こうかと率先して誘います。やだイケメン……と思っていたら、雫にこれがクリティカルヒットし、喜色満面で快諾。先輩好き好きオーラが練の如くコマ全体に広がります。つよい

 ただ、願い事を書くことを提案したもこっちであるものの、本人的には七夕自体に半信半疑。願いが叶うなら、とっくに処女を失っているはずですから、実感があります。

 そんなもこっちの手元をじっと見つめる雫。彼女に願い事を尋ねてみると、「もう願い事が叶った」と言います。女子の友達と共に、というかもこっちと一緒に七夕のお願いをできるだけで楽しいのだと。先輩大好きオーラが円のごとくコマからページ全体に飛び散ります。ぐえーまぶしい

 強烈なオーラでハゲかける読者。それを受けたもこっちも、「男だったら彼氏からNTRてた」とゲスな妄想。いやいやいやいや……違う、そうじゃない。などと巷の理解者は声高々に叫ぶことでしょう。もこっちが男子なら雫の取り巻きの一人に成り下がるだけ、そもそも成立しない関係なんです。わかってるなガイア 女子だからNTRるんだぞ

 新たな願い事を決めたという雫。その文面には、実にストレートに「先パイともっと仲良くなりたい」「できれば名前で呼ばれたい///」という男心をくすぐり尽くす願い事が記されていました。うわあ なんだかすごいことになっちゃったぞ

 この後輩、いまだに実力の底が見えません。男子なら一撃KO確実のなんという破壊力。もこっちもその真意を察し(むしろ書かれてる)、まず「平沢さん」呼びを提案。雫、名前呼びを逆提示。もこっち、「雫ちゃん?」と提示。 後輩に段階を踏んで押し切られる形でイケメン風を受け止めたもこっち、ついに「雫……」と後輩の願いを叶えます。

 歓喜の黄色い声をあげた雫、もこっちの書いた願いを接近して確認。このひたむきな好意にはゲスもこっちもたじたじです。ぐいぐい後輩×テレテレ先輩=破壊力! 温故知新、世界は再びその真理をつかみ取りました。読者もデレデレが止まりません。うひょー

 しかし雫の一連の行動を冷静に見返すと、女子人気でねえなこりゃあよぉ、というのが当然の感想。そんな読者の代弁をしてくれる女が登場します。二人のイチャイチャと雫の調子に乗った行動の一部始終一言一句を、校舎から見届けていたであろう女が一人。はい、ご想像通りのうっちーです。

 未だに自分が成し遂げられない下の名前呼びをポッと出の後輩に先んじられ、嫉妬に狂ったうっちー、怒りに握りしめた拳をどうにかほどいて短冊を掴み、歯を食いしばりつつ筆を取って七夕の願いを書き記します。その顔コワイから止めなよ そうして「七夕に キモビトのキモいこと この上なし」という字余りの上に意味不明☆の俳句が完成。なっちゃん先生なら才能ナシつけそう

 怒りのまま駆け出すうっちーは、その短冊を笹に括り付けます。こんなものを願い事にされて、いったい織姫と彦星に何の恨みがあるのか。様々な騒乱の種を孕む短冊が、天の川に解き放たれました。天の川銀河の終焉も近い


織姫も呆れとったわ
 下校時、加藤さんはもこっち(とゆりちゃん)を誘って行きたい場所があるとのこと。ポケットに手を突っ込むゆりちゃんがやたら男前なカット。

 加藤さんもやっぱり七夕祭りに興味があったようで、二人と共に短冊を吊るします。その文面はみんな「大学合格」と受験生らしい内容。ただ、加藤さんだけが「みんなで」青学に行きたいという文面。現状、青学合格が確実視されているのは彼女だけなので、みんなの失敗を不安視しているとも取れます。勉強のリーダー的にも、もこっちをぐいぐい引っ張って欲しいもの。

 加藤さん、もこっちに「短冊吊るすのはこれが初めてだよね?(意訳)」と確認。加藤さんにはまだ遠慮があるのか、とっさにウソを吐いて初めてだと肯定してしまうもこっち。

 ゆりちゃん、雫の短冊と共に吊るされたもこっちの短冊を見つけます。後輩とのセットの短冊、しかも雫のは先輩に媚び媚び。自身を誘わなかったのに、というわけでゆりちゃんとしては怒っても構わないと思うんですが、加藤さんの目からもこっちのウソを隠そうと、優しくも頭で遮ります。

 しかし無情にも、一陣の風がもこっちの短冊をふわりと舞い上げ、キョンシーの如くゆりちゃんの顔にぺたんと乗せてしまいます。加藤さんも目の前に差し出された短冊をバッチリ目撃。善意が裏目に出ますが、ゆりちゃんは短冊を乗せたまま動じません。カワイイ

 ここで注目すべきは、もこっちが短冊にしたためた願い事……かつての今江先輩の願いと同じものです。他人の幸せを少しでも願うようになったもこっちの成長が実感できます。このもこっちらしくない文面を見たからこそ、ゆりちゃんは隠してあげる気になったんでしょうか。失敗したけど

 そんな三人をみかけたのは、成田さん達と短冊を吊るしに来た風夏。謹慎最終日に加藤さんから仕込まれた疑惑の種は順調に根を張っていたようで、勉強にも手がつかない様子。成田さんと仲良しの人はあまり見なかったけど、成田さんの友達なのかしら。

 風夏の頭の混乱は短冊に書いた願いに反映されてしまいます。すなわち、「明日香の毛について知りたい

彦星「俺に伝えてどうすんだそんなこと!」

 風夏にとっては勉強に手がつかないので切実なんでしょうが、胸の内にひた隠しにしてください。早く!


ネモの夢、未来の目標
 その翌日、もこっちは再び一人で笹を眺めています。増えた短冊に感嘆するもこっち。ロッテファンのものとおぼしき下克上としたためた短冊、そんなロッテファンを見守る意思を見せる観察人の短冊の隣に、犯行予告が吊るされているのが気になりますが……。

 二木さんのものとおぼしき短冊も吊るされている中、もこっち、加藤さんの毛について記した風夏の短冊を発見。撤去もしなかったのか(困惑) 読者のみならずもこっちの方でもいよいよ風夏の評価が地を這いだした頃、もこっちは自分が進んで短冊を見に来てしまうことに気づきます。案外、いちばん楽しんでいるのは自分かも。ここでもこっちが「甲子園!」という短冊を見たことは覚えておいていいかもしれませんね。

 そんなもこっちに声を掛けたのは、ネモでした。もこっちが大学入学祈願の短冊のことだけ吊るしたと話すと、もこっちの非日常性をこよなく愛するネモ、ちょっぴり残念そう。

 ネモ、もこっちに昨日書いた短冊を見せてくれました。ネモの短冊は「20歳までに声優になる」こと、岡田さんのは「毎日楽しく過ごす」こと、清田くんのは「自由に生きる」こと。ネモの夢がストレートに書かれているのはともかく、岡田さんと清田くんのは邪推してしまいそう。とくに岡田さんはネモと疎遠になったことがけっこうダメージ大きかったんでしょうか? そもそも真面目に書くのも何なので、適当に書いたのかも。

 自分の夢を素直に書いたネモ、それをクロのお陰と言いますが、もこっちは「自分なんかやっちゃいましたか?」と心当たりがない様子。まぁたそうやってたらしムーブするぅ そういえば、もこっちサイドは自分がネモの心を開いたことを知らないんでしたね。それはそれで美味しい

 ネモ、昨年の七夕祭りにおいてもこっちがキャタツを使って短冊を吊るしていたことを言及。古傷をほじくり返されたもこっちですが、昨日のゆりちゃんの時とは違い、非処女を願った短冊のことを話します。ゆりちゃんには打ち明けなかったというのに、ネモには正直なのはちょっとエモさポイントがありますね。

 もこっち、声優なら処女を守らなければならないというネットの暗部を話題に。「膜無しじゃ新人アイドル声優ムリでしょ」と直球。……少なくとも隠していないと人気を失うのは否定しきれないのがネットの闇という感じですが、ネモは「バカじゃない」と一蹴し、「そういうこと言う奴は処女かそうじゃないかそもそも見分けられないだろ」と石直球。

まいったな

 スカッとしますが、声優になってからこれを言うと……非が無いのに炎上するのは本当に嫌な感じですので、立ち振る舞いに気をつかって燃料を与えないようにしましょうね。

 ネモはもこっちにお願いがあるとのこと。もこっちに、ラノベ作家になりたいという夢を書いて欲しいと短冊を手渡します。もこっちがその通りに書くと、ネモは隣に自分の短冊を吊るします。その内容は、「クロが書いたラノベがアニメ化してその声をあてる」 ……二人の将来がおぼろげながら見えた気がします。

 もこっちはそもそもラノベ作家もアニメ化も厳しいと言いますが、ネモは願うだけなら自由と笑います。ネモの夢はすでに目標になっているのではないか、と感じる言い回し。まさに青春のひとコマ。七夕に願う二人の夢が叶うといいなぁと思います。いやマジで


今江先輩ともこっちの願い
 ラストページ。下校中のもこっちは、笹が撤去されるところに居合わせます。笹から落ちた一枚の短冊には、無記名で「みんなでずっと仲良く一緒に」と記されていました。
 それを拾ったもこっち、実行委員の女子に手渡します。実行委員の女の子に笹の行方を尋ねると、近所の神社でお焚き上げされるとのこと。

女子「前の生徒会長が考えたんですよ このイベント」
もこっち「……うん 知ってる」

 今江先輩が立ち上げ、後輩たちに残したイベントを今年も楽しんだもこっち。改めて憧れの人の偉大さを実感したものでしょうか。

 願いなんて叶うわけない、という斜に構えた七夕の否定は、それを信じる人々の願いの否定でもあります。もこっちは自分、自分ばかりだった昨年の七夕祭りより少し大人になり、それでも、と許容したようです。キレイごとでも、現実になる方が良いってことですね。


短冊考察
 最後に笹から落ちた短冊を書いたのが誰か、というのは巷で話題になりました。
 ここに直接つながるのは、この話の始めに願い事をひた隠しにしたゆりちゃんというのが一番の予想です。ただ、失礼ながらゆりちゃんらしくない文面であることも事実(すごくシツレイ)。

 ストレートにゆりちゃんだとするなら、ゆりちゃんの現状、もこっち達と築いた友情を快く思い、他人の願いが叶うことを願ったもこっちのために、あるいは友達の増えた自分のためにも願いを記したことを示したものでしょう。

 あるいは、かつてそうでない状況に置かれたから、今度こそ、というのも考えられます。キバ子関係か? キバ子、まこっち、ゆりちゃんラインの細やかな伏線がどういう結果につながるのか、見届けたい……キバ子はどんなやらかしを(期待)

 もしくは、まったくの第三者。もこっちの深層心理を代弁してくれた名も知らぬ生徒の短冊かも。人の幸せを願う、人間にとって最も大切なことをするもこっちや今江先輩、皆の気持ちが表れたということなら、ちょっといい話。こういうまったくセリフもないモブの願いって好きなので、個人的にはこれを推したい。書き手が誰であれ、叶えばいいなというのが今回のテーマです。
 ただし風夏とうっちー、てめえらはダメだ