アポロ11
アポロ11 完全版の映画感想をしたためていく。

アポロ11号は月に行ったって言うのに


あらすじ
 1969年7月16日、アポロ11号打ち上げの日。ロケット・サターンⅤに3人の宇宙飛行士が乗り込む。午前9時32分、アメリカ国民の期待と夢を乗せ、サターンⅤは打ち上げの瞬間を迎える……。


どんな映画?
 アポロ計画においてはじめて月面に到達したアポロ11号の様子を実際の映像を含めて再現するドキュメンタリー風の映画。あくまでカメラは当事者としてその一刻一刻を映し出す手法を取っている、ストイックな感じ。


背景
 アポロ11号に関する情報をご紹介。

アメリカの宇宙開発
 1950年代、ソ連と冷戦状態にあったアメリカは、1957年にソ連が人工衛星スプートニク1号を発射したことで、その宇宙開発に対抗すべく、有人宇宙飛行計画のマーキュリー計画を打ち出した。その後、14日間の宇宙滞在を目的としたジェミニ計画を次々打ち出し、それらの成果がアポロ計画に続くことになる。

アポロ計画
 1961年に始動した、人類初の月への有人宇宙飛行計画。1972年まで実施され、全6回の有人月面着陸に成功した。アポロ8号において、初めて月の周回軌道にたどり着き、11号において初の月面着陸に成功。その後、17号まで計画は続いた。
 1961年にはソ連のガガーリンが初の有人宇宙飛行を成功させており、宇宙開発に遅れを取ったことを不安視する世論の後押しもあったものと考えられる。ちなみに、アポロ11号の予備乗組員3名は後のアポロ13号の乗組員。


アポロ11号乗組員

ニール・アームストロング
 船長。言わずと知れた、月面に到達した初の人類。

マイケル・コリンズ
 司令船コロンビアの操縦士。月面に個人として到達することは無かったが、司令船の番を務めた。二人が月面にいる21時間、彼の孤独を知る者はアダムだけだったとか。

エドウィン・バズ・オルドリン
 月面着陸船パイロット。アームストロングの次に月面に降り立った。


内容
 3人のパイロットの過去と訓練の様子が写真や映像などでダイジェスト気味に描かれ、打ち上げに向けて期待と緊張が高まっていく。
 時代が時代だけあって機器が本当に古めかしい。現在の感覚だと本当にこれで飛べるのか、機能するのかという疑問が湧くほど。アポロ計画に携わる人員の数も予想以上、打ち上げを一目見ようと集まる観客やマスコミも山ほどいて、まさに国を挙げた一大プロジェクトだったと思われる。

 開始から20分は打ち上げ前の出来事のため、正直、退屈といえば退屈。興味のある人はたまらないだろうが、まだ? と思わされるだろう。当時の国民感情を表したものかもしれない。
 ただ打ち上げからは、青空を上っていくロケット、暗闇の宇宙を進む映像の数々、特に暗闇に浮かび上がる月面の美しさは圧巻の一言。分離・ドッキングのシーンは特に大好き。
 再現ドラマやインタビュー、ナレーションも無く、キャラの感情表現という点はそぎ落とされているものの、高い緊張感が維持され、月面着陸では特に手に汗握る。簡易なCGでアポロ11号がこれからどういうことをするのか観客に提示しているので、違和感なく没入できるのも嬉しい点。

 日本人にとっては映画「アポロ13」の方が身近な存在に感じるだろうか。アポロ13号はトラブルで本懐こそ達成できなかったものの、乗組員が無事に生還したドラマチックな展開だった。反して「アポロ11」では順調に着陸を終え、順調に業務をこなした。日本では志半ばでトップを獲れなかった悲哀が評価されることが多々ある。このアポロ11号は絶対的な成功例で感情移入しにくくはあるものの、その歴史的な偉業は色あせることが無いということを再評価できる映画だろう。





月の周回軌道で読んでみても……な別映画感想